フランク・ロイド・ライトの照明が、今なお世界中で愛される理由

「建築家なのに、照明や家具までデザインしていたの?」
フランク・ロイド・ライトを初めて知ると、多くの人が少し驚きます。
今でさえ、ライトの作品は多くの人に知れ渡っていますが、彼は建物だけを設計した人ではありません。
家具や照明、窓や装飾に至るまで、空間を構成するすべてを一つの作品として考えていました。
だからこそ、ライトが生み出した照明は、今でも"建築を飾る照明"ではなく、"建築そのものを感じさせる照明"として世界中で愛され続けています。

自然とともに暮らす建築を目指した人
フランク・ロイド・ライト(1867-1959)は、アメリカを代表する建築家。
ライトと言えば東京の旧帝国ホテルを連想する人が多いかと思います。
その他にも「落水荘(フォーリングウォーター)」や、ニューヨークの「グッゲンハイム美術館」など、建築史に残る数々の名作を生み出しました。
彼が大切にしていたのは、「有機的建築(Organic Architecture)」という考え方。
自然の中に建物を置くのではなく、自然と建築が一体となること。
外と内、家具と建築、光と影までをひとつの空間として考えること。
その思想は、照明デザインにも色濃く受け継がれています。

引用:「明治村」公式HPより旧帝国ホテル中央玄関
ライトにとって、照明は「光を置く」ものではなかった
一般的に照明は、部屋を明るくするための道具。
でもライトはそう考えていませんでした。
彼は光そのものではなく、「光が生み出す空間」をデザインしていました。
直接まぶしい光ではなく、壁や天井に反射しながらゆっくりと広がる柔らかな灯り。
その光によって木の質感や建築の陰影が美しく浮かび上がる。
まるで夕暮れ時の自然光のような、落ち着いた空間を演出することを大切にしていたのです。
今では当たり前になった間接照明の考え方を、100年近く前から実践していたともいえるでしょう。

日本との深い縁も、デザインに息づいている
実はライトは、大の日本好きとしても知られています。
浮世絵を数千点収集し、たびたび来日。
障子越しの柔らかな光や、木を活かした日本建築の美しさに魅了され、その感覚はライトの作品にも少なからず影響を与えたといわれています。
だからでしょうか。ライトの照明はモダンでありながら、和の空間にも驚くほど自然に馴染みます。

ライトの照明を語るなら、「タリアセン」は外せない
ライトの照明と聞いて、多くの人が思い浮かべるのがタリアセンシリーズです。
木製の板を幾重にも積み重ねたような独特のフォルム。
一見するとオブジェのようですが、灯りをともすと木の隙間から光がやさしく漏れ、空間全体を包み込むような雰囲気をつくり出します。
ちなみに「タリアセン」とは、ライトの自邸兼設計事務所の名前。
彼にとって最も創造的な時間を過ごした場所の名が、そのまま照明にも受け継がれています。
建築家の思想を最も象徴する照明と言っても過言ではありません。

空間との調和を大切にした
実はライトは「派手なシャンデリア」をあまり好みませんでした。
視線を奪う照明ではなく、建築や暮らしを引き立てる光を理想としていたからです。
そのため、ライトの照明は光源が直接見えにくく設計されているものが多く、光そのものよりも「空間全体の美しさ」を楽しめるよう工夫されています。
派手さではなく、心地よさ。その価値観は、現代のインテリアにも通じるものがあります。

時代が変わっても色褪せないデザイン
フランク・ロイド・ライトが亡くなってから半世紀以上。
それでも彼の照明は、世界中で復刻され、多くの人に選ばれ続けています。
それは流行を追ったデザインではなく、「心地よい空間とは何か」を追求したデザインだから。
照明は部屋を照らすもの。でもライトの照明は、それだけではありません。
建築を美しく見せ、人の暮らしを豊かにし、空間そのものに静かな存在感を与えてくれる。
そんな"建築家だからこそ生み出せた照明"が、フランク・ロイド・ライトの作品なのです。
(文:柴田)



































































































































